薬学博士が開発!スキンケア商品の販売秘話|株式会社ヒーラルヘルスケア研究所今中侑子さん【予防医学な薬剤師インタビュー】

自己紹介をお願いします
明治薬科大学のセルフメディケーション学研究室の客員研究員をしております、
今中(イマナカユウコ)と申します。
イマナカさんはスキンケア商品の開発と販売をされているとのことですが、大学内でされているのですか?
はい、大学の研究室で開発のための研究を行っています。
実際に販売している商品の製造は、GMPの認可、化粧品製造の認可を受けた工場へお願いしています。
研究室としての取り組みですか?取り組みのきっかけは?
はい、研究室の1テーマとして取り組んでいます。
開発当時、私は化粧品原料の開発が主の会社へ務めながら、研究生として大学の研究室へ通い製剤学の技術を学んでいました。
その当時教授だったイシイフミヨシ先生から
「学んだ技術や知識は自分の中に留めるのではなく、患者さんの悩みを解決できる形に変えたりだとか、世の中の人々に対して何か貢献できるようにしていかなかったら意味がない」
と教わり、自分も何か解決できるような商品であったり、サービスであったりへつなげていきたいと思っていました。
そんな中で、医療の現場では肌トラブルで悩んでる方が非常に多いというのを体感していたことと、
化粧品原料会社に勤務していた際に営業に同行し説明を求められる場が多かったのですが、
大手化粧品会社の開発の現場に携わって、自分が開発した原料を配合してもらいその会議に立ち会っていました。
その時に大手メーカーさんに原料を採用していただき、商品に配合して頂けても、その濃度は小数点以下の0が9つも並ぶ、すなわちppm単位程度でした。
これじゃあ効果は出るはずがない!入ってるか入ってないか分からないような濃度での配合になるので、疑問に思い尋ねてみると
「化粧品は効果がないという範囲だからそんなに入れる必要はない。天然成分は高価なので沢山配合すると原価が高くなってしまう、利益を得るにはできるだけ少ない量で配合して表示に「〇〇配合」としたいから(イメージをよくしたいから)、入ってるか入ってないか分からない量で良いんだ」
と言われ、私としては納得がいかないし、患者さんに心から勧められないし、説明ができないと感じました。
そこで私は、企業利益を考えて作る商品ではなく、使う人のことを一番に考えた、使う人のために成分濃度を設定した商品を開発してみたい、
大学で学んだ製剤の技術を生かし、今までにない商品を作ってみたいという考えに至りました。
化粧品の分野は、数値などに必要なエビデンスや論文は見つけづらいと思いますがどうですか?
そうですね。
化粧品に入っている1つ1つの成分についての論文は沢山ありますので参考になりますが、
商品については、例えばメーカーが成分をどれくらいの濃度で入れているのか、
どんな効果があるかということについての情報は開示されていないため、開発現場でしかわからない、
一般消費者では分からないことが沢山あります。
使う人の為や研究のデータで分かった上での量を入れたスキンケア商品を大学との共同研究で販売しているということですね。
そうです。
肌荒れを防止する効果が非常に高い緑茶カテキンという成分を徹底的に研究して、
化粧品として配合するのに適正量を決定するための勉強をしました。
ラインナップはどういったものになりますか?
現在は5種類あります。
まずは肌トラブルで悩んでいる人で多かったのが手荒れだったので、ハンドクリームをイメージして、全身にも使える保湿クリームを作りました。
開発の過程で、患者さんや薬剤師さんに使っていただきながら意見を聞いたら使用感の好みが大きく2種類に分かれてしまったので、
一つは塗ってすぐさらっとしてほしいニーズに応えたサラサラタイプ、
もう一つはしっかり塗ってベール感を感じたいというニーズに応えたしっとりタイプのクリームを2種類開発し商品化しました。
その後、いい香りがするものがほしいというニーズが増えたので、
ラベンダーとオレンジとミントの香りを配合しリラックス効果のあるアロマも取り入れたいと思い、
京都大学の先生が証明した「緑の香り」の成分をさらに追加配合して、精神的にリラックス効果が期待できるタイプを開発しました。
その後、クリームタイプだと背中など広い範囲に伸ばして広げるのが難しいというご意見が増え、
乳液タイプも作りました。
乳液を開発する際には、自分を含め女性は顔に使いたいと思い、アンチエイジング成分も配合しました。
乳液タイプを販売すると「化粧水はないのですか?」と聞かれることが多かったので、
患者さんのニーズにお応えしてローションの開発と販売に至りました。
その商品はどちらで購入できますか?
保険(調剤)薬局限定で販売しています。
2021年2月現在、店舗数は約300店舗で取り扱っていただいています。
これからももっと広げていきたいと思っています。
今後スキンケア商品を広めるという点でなぜ調剤薬局を選んだのですか?
薬局の今、処方箋がないと入れない、薬をもらいに行くだけの場所というイメージを壊したくてこの商品を一つのアイテムとして使ってほしいと思いました。
現状は皮膚科で相談するまでには至らず、お肌の悩みをそのままにしている人がとても多くて、薬局で相談していいんだよ、薬剤師に話していいんだよって、知ってもらうきっかけになればいいなって思っていて、
薬局からセルフメディケーションを発信していくためのひとつのツールになればなぁ、と考えたのがきっかけです。
また、調剤薬局であれば、薬剤師や医療スタッフによって、正しいスキンケア方法のアドバイスもしっかりしていただけます。
お肌のお悩みは、良い品質のスキンケア商品を使うことも大事ですが、
それと同じくらい、正しいスキンケア方法で、お肌に負担をかける生活習慣を改善することも大事になります。
薬局であれば、この商品と正しい情報が揃い、はじめて肌の悩み解決につながると感じました。
これから薬局や薬剤師が商品やセルフメディケーションをやっていくのに課題というか足りてないと思うもの研究者側からで感じることはありますか?
難しい問題ですね。
セルフメディケーション研究室としては、溝呂木先生の活動と近いものになるとは思うのですが、
薬剤師が行う食事・運動の指導、睡眠の相談など、生活習慣の改善支援をテーマに研究をしていますが、
現場の薬剤師には相談の時間が十分に取れないことと、取り組みたいと思っても許してくれないとか、経営面ではお金にならないという点で力を入れられないところがネックになっていると実感しています。
今では、薬剤師が健康相談を受けたり、生活習慣のアドバイスをすることで病気を予防したり、今病気のある人を服薬の対処療法だけではなくて根本的に健康な状態に持っていくというサービスに対して、
適正な金銭的価値(保険点数や特定保険指導料、自費の有料サービスなど)をつけていくのが大事なのではないか、と感じています。
これは伝えたい、ということがあればお願いします。
研究室ではスキンケアもセルフメディケーションの1つとして考え、肌に悩んでいる人に対し、
薬剤師としてどう貢献していけるかということを考え、スキンケア商品の開発や、スキンケア方法や生活習慣改善などのアドバイスによって、肌悩みを含めた心身のお悩み解決サポートの支援を行っています。
この活動をもっと沢山の先生方に知って頂けたら嬉しいです。

【会社概要:問い合わせ先】
株式会社 ヒーラルヘルスケア研究所
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